今年から始めたブログ。年末にはやってみたかった、ベスト・バイ。要するに「読んで良かった本」をピックアップしていきます。まずは小説編
◎「さよなら、シリアルキラー」
シリアルキラー3部作。小学生から大人まで広く楽しめる読みやすさなのに、主題は「定められた自分と向き合う」という深さ。それは殺人鬼の息子に生まれた血と運命であり、周囲の偏見であり、仲間の優しさであり。
◎記者の報い
元記者小説はけっこう主人公を美化したものがおおい。本作もその気はあるけれど、なんというか悲哀もすごい。その意味でフェアに楽しめる。ストーリー展開もテンポよく、テレビマンの矜持が無理なく胸に迫る。
◎ガラパゴス(上下巻)
安定の相場英雄さんが、派遣労働、低賃金労働をテーマにとらえた。いま、働いて、頑張って、生きた証しを残せる人がどれだけいるだろう。自分が歩いた轍はあまりに細いんだと空恐ろしくなると同時に、どんなにみじめだと思う生き方でも、そこにエールを送ってくれる人がいることを感じさせる。
◎「アメリカ最後の実験」
宮内悠介イヤーといって良いほど魅了された一年。「盤上の夜」も「エクソダス症候群」もおすすめ。だけどあえて本作。生を繊細に切り取る著者が、ピアノを走る指先、ほとばしる汗を渾身の筆致で書ききった。
◎オービタル・クラウド
テクノロジー小説の旗手藤井太洋さんが宇宙を舞台に書いたSF。壮大な世界観と国際的な野望がぶつかり合う様は、藤井版「007」と言っても差し支えない。スパイは出てこないけど。
◎機龍警察
シリーズ作品なのでするめのように楽しみ続けられる。テロリズムに対応する警察力とは。新たなテクノロジーと既存の組織の対立。今日的なテーマをスリル満点で読み進められる。おすすめは「自爆条項」。罪と罰、許しの物語だ。
◎「『ファミリーラブストーリー』」
「逃げ恥」とは別の形で、夫婦を超えていく物語。一緒にいましょうだけがハッピーエンドなのか?問い掛ける一冊。別稿で書評を書きたくなった一冊。