読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

降りたっていいー読書感想「START UP アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」(ダイアナ・キャンダー)

大切なのは、ゲームに参加し続けること。そのためには時に、ゲームを降りたっていいーー。起業家兼コンサルタントのダイアナ・キャンダーさんによる「START UP(スタートアップ) アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」のメッセージだ。日本では「ベ…

役に立つしかない未来ー読書感想「侍女の物語」(マーガレット・アトウッド)

「トランプ政権の未来がここにある」。帯の惹句の強烈なインパクトに痺れて手に取ったディストピア小説が、マーガレット・アトウッドさんの「侍女の物語」だった。特定の女性が「子どもを産むための道具」のように扱われる管理社会。効率性や人権の抑圧を煮…

一人で始める働き方改革ー読書感想「「自分」の生産性をあげる働き方」(沢渡あまね)

働き方改革はいまここから、一人でも始められる。業務改善士・沢渡あまねさんの「『自分』の生産性をあげる働き方」は、そのためのガイドになる。労働生産性を上げるのは、単に労働を効率化するだけではない。自分らしく、豊かに、高度な人材になるための第…

1984はつくれるー読書感想「生きるための選択」(パク・ヨンミ)

北朝鮮の外交ではなく、社会を知りたい。そう思って手に取ったのが、13歳で母とともに決死の脱北をしたパク・ヨンミさんの自伝「生きるための選択」だった。ヨンミさんが描いているのは、ジョージ・オーウェルの「1984」のような世界。しかし、これは…

善×n=善?ー読書感想「ザ・サークル」(デイヴ・エガーズ)

情報をシェアすることは善?ーイエス。他人に秘密を持たないことも善?ーイエス。誰かのアクションに「いいね!」することは?ーイエス。じゃあそれらを、全部、完璧に追求したら、それも善、だよね? ソーシャルでオープンな善をひたすら(n個)積み上げて…

2017年「人生を揺さぶられた」10冊

「この本に人生を揺さぶられたな」。振り返って、そう思える出会いがあることが読書の醍醐味です。2017年に巡り会えた「揺さぶり本」10冊を紹介したいと思います。小説からノンフィクション、恋愛からレジリエンス、カウボーイからAI、沖縄から香港。…

0の力ー読書感想「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか」(相原孝夫)

モチベーションに関わらずパフォーマンスを出せることが最強である。人事組織コンサルタント相原孝夫さんの「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか」は、そんな「モチベーション0.0」という革新的なアイデアを授けてくれる。決して煽りじ…

知の波状攻撃ー読書感想「9プリンシプルズ」(伊藤穰一、J・ハウ)

結論から言えば、この本はめちゃめちゃ難しい。たぶん5%も内容を理解していない。ただ、「理解する価値がある」ことだけはかろうじて分かる。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長の伊藤穰一さんが、ワイアード誌の元エディター、ジェフ・ハウ…

未来とは新しい過去ー読書感想「「朝ドラ」一人勝ちの法則」(指南役)

あれ、これ指南役さんの本に書いてあったことじゃない?と、最近よく思い出すのが「『朝ドラ』一人勝ちの法則」だ。テレビ番組「逃走中」、映画「バブルへGO!!」などを手掛けたメディアプランナー。そんな指南役さんが、「最近のNHK朝の連続テレビ小説(朝…

後悔とはちがうものー読書感想「水曜の朝、午前三時」(蓮見圭一)

もしもあの時、あの人の手を離さなかったならー。蓮見圭一さんの小説「水曜の朝、午前三時」は、そんな「有り得たかもしれない人生」がテーマだ。義理の母親が死の病の淵で残した、長大な音声テープ。そこには1970年、大阪万博の裏で散っていった一つの…

加計問題は本当に問題なのかー読書感想「これからの日本、これからの教育」(前川喜平・寺脇研)

「加計学園問題」は何が問題なんだろうか?そもそも、本当に問題なのか?それを考えたくて手に取ったのが、「総理のご意向」文書を告発した元文科省事務次官・前川喜平さんと、同じく元文科官僚で京都造形芸術大教授・寺脇研さんの対談本「これからの日本、…

ど真ん中ナックルボールー読書感想「屍人荘の殺人」(今村昌弘)

最大の難関は、いかにネタバレに触れずに読み始めるか。あとはただ、謎とサスペンスの世界にひたすら没入させてくれるのが、今村昌弘さんの小説「屍人荘の殺人」だ。ミステリーの王道中の王道、密室殺人を扱う。だけど、ネタバレになるから絶対に言えないあ…

デジタルネイチャーの未来地図ー読書感想「魔法の世紀」(落合陽一)

「情熱大陸」出演で話題をさらった「現代の魔法使い」落合陽一さんが、テクノロジーやコンピュータ、メディアの現在・過去・未来を書き尽くしてくれた本が「魔法の世紀」である。リアルとバーチャルの境目がコンピュータによって踏み越えられた世界・デジタ…