読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

起業家けんすうさんが質問箱でオススメされた本24冊+αを意地でまとめてみた

起業家のけんすうさん(Twitter: @kensuu)の3万超のツイートをひたすら遡り、匿名Q&Aサービス「質問箱(peing.net)」、同種サービス「Sarahah」でオススメされた本をまとめたのがこのエントリーです。ついでに、普段のツイートで紹介された本もプラスアル…

命を奪うことを肯定する女ー「そしてミランダを殺す」(ピーター・スワンソン)

殺人計画の物語の顔をして、殺人計画「から」始まる物語だった。米国人作家ピーター・スワンソンさんのミステリー「そしてミランダを殺す」は転がるほどに予想外の軌道を描く。空港で出会った美しい女に、妻ミランダの不貞を打ち明ける。「ぼくは妻を殺すつ…

我々はまだ明日であるー読書感想「昨日までの世界」(ジャレド・ダイアモンド)

伝統社会は、実はほんの「昨日」でしかない。人類生態学者ジャレド・ダイアモンドさんの「昨日までの世界 文明の源流と人類の未来」は、人類の過去と現在をつなぐ回路を読者に開いてくれる。21世紀の我々が、狩猟社会や農耕社会に学ぶことはあるだろうか?…

ゴッホが本当に描きたかったものー読書感想「たゆたえども沈まず」(原田マハ)

ああ、この物語の世界が終わってしまう。先を読みたい気持ちと、終わりに近づく悔しさと、「たゆたえども沈まず」を読んでいる間に気持ちが行ったり来たりする。「楽園のカンヴァス」などアートを題材にした小説を多く書かれている原田マハさんが本作で取り…

医師の視点ー読書感想「崩れる脳を抱きしめて」(知念実希人)

知念実希人さんは作家であると同時に内科医であり、「崩れる脳を抱きしめて」は医師の視点がピリッと効いたミステリーだと感じた。神奈川県葉山町の海辺にある、高所得者向けの療養病院。抱えた過去から出世にこだわる研修医と、若くして脳に「時限爆弾」を…

システム1は止められないー読書感想「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)

人間には2つのシステムがある。それがノーベル賞を受賞した経済学者、ダニエル・カーネマンさんが「ファスト&スロー」で伝えてくれる、一番シンプルで、一番ドラスティックな教訓だ。「システム1」は働き者で、ファストな判断をしてくれるものの、様々な…

ままならない人生だけどー読書感想「キラキラ共和国」(小川糸)

「そりゃ、生きていくってことは、大変よ。ままならないことばっかりなんだもの」。小川糸さんの「キラキラ共和国」は、あっけらかんとしたメッセージに溢れている。鎌倉にある「ツバキ文具店」は、手紙を代わりに書いてくれる「代書屋」でもある。シリーズ…

学ぶと楽しく生きられるー読書感想「『行動経済学』人生相談室」(ダン・アリエリー)

勉強が苦手だというひとには、この「『行動経済学』人生相談室」をおすすめしてみてほしい。深夜ラジオのように、学者さんのダン・アリエリーさんが様々なお悩みに答えてくれる。彼の専門、行動経済学は、恋から資産運用、引っ越しもお昼のビュッフェも、ち…

停滞から循環にー読書感想「AIとBIはいかに人間を変えるのか」(波頭亮)

人工知能(AI)とベーシックインカム(BI)が組み合わさったとき、停滞した社会は再び循環を始める。戦略コンサルタント波頭亮さんの「AIとBIはいかに人間を変えるのか」は、そんな可能性を示す。AIは知的パワーを代替し、人間はギリシア時代のように「真・善…

トランプ氏はピッコロかもしれないー読書感想「炎と怒り」(マイケル・ウォルフ)

もっとも衝撃的だったのは、まだ彼が「第1章」かもしれないということだ。本人から出版差し止めも示唆され、ベストセラーとなった「炎と怒り トランプ政権の内幕」。トランプ氏とはどんな人物か、だけではなく、一体誰が彼を支え、あるいは利用しようとして…

殺し屋が愛を知ったらー読書感想「AX アックス」(伊坂幸太郎)

殺し屋が愛を知ったらどうなるのか。それでも殺し続けるのか。愛に生きる、生き直せることはできるのだろうか。小説「AX(アックス)」は伊坂幸太郎さんらしい軽妙な物語の運びながら、深淵には重厚なテーマが流れる。最強無敵の殺し屋「兜」は、なぜか恐妻…