読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

トランプを生んだ熱病ー読書感想「反知性主義」(森本あんり)

なぜトランプ大統領は誕生したのか。考える補助線の一つになる本が「反知性主義 アメリカが生んだ『熱病』の正体」だ。トランプ現象の源流になった「反知性主義」とは、キリスト教文化を背景にしている。徹底した「神の前の平等」という、平等主義のラディカ…

「左ききのエレン」という労働讃歌に支えられている

「左ききのエレン」という漫画は働く人へのエールだと思う。うまくいかなくても、辛くても、格好悪くても、なんとか今日を働ききった誰かに向けた、労働讃歌だ。そして、それでも夢や理想を捨てられない労働者へ。何度も読み返して、何度も支えられている。…

ハピネスを可視化するー読書感想「データの見えざる手」(矢野和男)

ハピネスは可視化できる。「感じるもの=定性」から「測れるもの=定量」に置き換えられる。野心的なメッセージをファクトをもって伝えるのが、矢野和男さんの「データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」だ。 矢野さんは日立…

終わりの匂いがする恋愛小説ー「じっと手を見る」(窪美澄)

窪美澄さんの「じっと手を見る」は恋愛小説だけれど、キラキラした希望より終わりの匂いがする。人間が誰も避けられない死の予感がする。むしろそれを正面から取り上げている。 富士山が見える田舎町で、介護士として働く男女と、二人に関わる別の男女計4人…