読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「本当の自分」から「自分のほんとう」へー読書感想「愛の本」(菅野仁さん)

本当の自分を探しても見つかりはしないだろう。そうじゃない、自分にとっての「ほんとう」を探そう。自分がどうすれば「生きることの味わい」を感じられるのか。そのために外へ出よう。他者と関わろう。社会学者菅野仁さんの「愛の本」はそんな転回を呼び掛…

可能主義者になるー読書感想「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリングさん他)

世界は悪くなっているように感じられる。しかし、観測可能なデータを見る限り、世界は過去に比べて良くなっているのだ。貧困に苦しむ人、大人になる前に命を落とす子どもの数は減り、女子教育、インターネットへのアクセスは増えている。世界が良くなってい…

長い長い鎖の小さな輪ー読書感想「羊飼いの暮らし」(ジェイムズ・リーバンクスさん)

「羊飼いの暮らし」はイギリスで600年以上続く羊飼いの家系をつなぐジェイムズ・リーバンクスさんのエッセーだ。リーバンクスさんは言い切る。私の名前など残らなくていい。100年後も羊飼いの仕事が続いていれば、その土台のほんの一部が自分なんだろ…

誰かの人生の脇役になれるんだー読書感想「フィフティ・ピープル」(チョン・セランさん)

私たちは誰かの人生の脇役になれる。それは希望だ。それを教えてくれる物語が、ソウル生まれの作家チョン・セランさんの「フィフティ・ピープル」だった。 みんながみんな、自分の人生の主人公なのだと言われる。でも人生という物語は必ずしも大河ドラマのよ…