読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

セラピーだけでなくケアもー「居るのはつらいよ」(東畑開人さん)

何かをしてばかりいる。どこかを目指して、何かを目指してばかりいる。自分の生活には「する」がギュウギュウになって、ただ「居る」ことなんてほとんどないな。「居るのはつらいよ ケアとセラピーの覚書」は「居る」を取り出して、よくよく見つめて、その奥…

乗り物である私たちー読書感想「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンスさん)

生物とは利己的な遺伝子が生き延びるために使う乗り物である。生物学者リチャード・ドーキンスさんの「利己的な遺伝子」の言説はこのワンセンテンスに集約される。この刺激的なメッセージを、400ページ余り使って大きく展開する。1976年の初版なのに、今読ん…

なぜそこでは自殺が少ないのかー読書感想「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」(森川すいめいさん)

自殺件数が相対的に少ない「自殺希少地域」というものがある。そこではなぜ自殺が少ないのだろうか? 精神科医森川すいめいさんが、実際に現地を旅して感じた学びをアカデミックな知識と結びつけながら綴ってくれた本が「その島のひとたちは、ひとの話をきか…

残業は解剖できるー「残業学」(中原淳さん+パーソル総合研究所)

「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?」は、残業のメカニズムを明らかにする本だ。残業は個人の能力の問題でもないし、止むを得ず発生する現象でもない。残業は解剖できる。原因を構造化できる。その上で、効果的に対策を打っていくことは可…