ノンフィクション-社会問題を学ぶ
いったいこの胸の孤独は、いつ埋まるんだろう。本書「声をかける」を読み終えて、そんな切なさがこみ上げた。ある男性が、東京でひたすらナンパをしていくという話。著者は高石宏輔さんという方で、帯裏の紹介には、1980年生まれで慶応大学中退、いくつ…
「歩く」という一点から、これほど知的な旅が広がるのか。作家レベッカ・ソルニットさんの「ウォークス 歩くことの精神史」はそんな驚きをくれる。歩くことは運動であり、進化であり、宗教であり、女性差別やセックスワークと不可分であり、政治的であり、近…
日本国内の総合電機メーカーの興亡を構造的に解き明かす日本企業版「失敗の本質」が、本書「東芝解体 電機メーカーが消える日」だ。 第二次世界大戦で敗北した日本の組織論をモチーフにしていることは、著者の大西康之さんも「おわりに」で自認している。 元…
ポスト・トゥルースの時代であり、ポピュリズムの足音が聞こえる「いま」を、ナチスドイツや共産主義が大量虐殺と大戦争を生んだ「あの頃」と比べ、教訓を得る一冊が本書「暴政」だ。著者のイエール大教授ティモシー・スナイダー氏は、「ブラッドランド」な…
著者のイラストレーター・汐待コナさんの漫画にネットで出会い、救われた。働いて働いて辛くて、そんな自分の状況を視覚化してくれて、「世界は、本当は広いんです」と背中を押してくれた。本作「『死ぬくらいなら会社辞めれば』ができない理由」は、話題に…
福島第1原発事故後、速やかな除染対策を打ち「除染先進都市」と評価された福島県伊達市を舞台に、「放射線被害とどう向き合うか」を問い掛けるノンフィクション。著者のジャーナリスト黒川祥子さんは伊達市がふるさと。事故後も生活を、子どもを守るお母さん…
相模原市の障害者施設が襲撃され、入所者19人の命が奪われた殺傷事件が起きたのは、2016年7月26日のことだ。本書「相模原障害者殺傷事件 優生思想とヘイトクライム」の第1刷発行は翌年1月5日で、半年ほどの極めて早いスピードで、事件の根本にある、安楽死…
トランプ氏が、どうして米大統領になれたのか。その背景に「ラストベルト」(錆び付いた地帯)と呼ばれる衰退した工業地帯がある。黒人やヒスパニック系移民が、米社会のマイノリティかと思っていたが、ラストベルトの白人労働者こそ鬱屈した閉塞感を抱えて…
情報を伝える・受け取るための「メディア」は、まるで一つの生態系をつくっている。NHKの速報テレビニュースや新聞各社のネット速報が発信されると、「ヤフーニュース」「ライブドアニュース」のトップトピックスにも表示され、新興メディア「バズフィー…
なぜこの人は、ムキムキマッチョ、筋骨隆々なのか。独特の威圧感を備えているのか。見る度に不思議が募るのが、ロシアのプーチン大統領だった。昨年秋、安倍晋三首相の地元・山口に来訪するニュースを機に、疑問を解消しようと書店を見て回った結果、手に取…
生きていくということは、過去を積み上げていくことだ。20歳なら20年。たとえ生まれて1日であっても2日であっても、今日まで生きた日数の上に人生がある。その時間の中の、思い出、楽しみ、苦しみ。まるで足跡のように、過去はたしかに消えないものと…
傷つくことと、傷つけられることは、どう違うのだろう。それは同じ傷であっても、同じ痛みではない。本書「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」は、誰かから暴力を受けるということが一体何を意味するのか、「暴力を受けた側」の言葉で、それも当人たちの…
誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち 作者: スティーヴン・ウィット,関美和 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/09/21 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (2件) を見る 泥棒、強盗、窃盗犯、盗人。盗む人の呼称は…
ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-12) 作者: ジョン・クラカワー,菅野楽章 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2016/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 大切な人の命を奪わ…
(2017/10/09更新) 非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か (集英社新書) 作者: 杉田俊介 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2016/12/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 表紙の帯に漫画が書いてあると、それだけで「ライトな内容な…
バブル:日本迷走の原点 作者: 永野健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/11/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 自分は「バブル」後に生まれた世代であることはなんとなく認識していても、バブルとは一体いつから始まって、なぜ終…
ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか (集英社新書) 作者: 危険地報道を考えるジャーナリストの会 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2015/12/17 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る フリージャーナリストから現役通信社記者、新聞社特派員OBな…
トランプ 作者: ワシントン・ポスト取材班,マイケル・クラニッシュ,マーク・フィッシャー,野中香方子,森嶋マリ,鈴木恵,土方奈美,池村千秋 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/10/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 不動産でもなく…
総理 作者: 山口敬之 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2016/06/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 16年近く国会や内閣の動きを追ってきた元TBS政治記者によるルポタージュ。テーマはずばり、「総理とは何なのか」。そして総理た…
それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫) 作者: 加藤陽子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/06/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る なぜ日本は太平洋戦争に突き進んだのか。その道筋を日清戦争、日露戦争からたどっていく本書…