「暮らしの映画」だった。
「スゴ本」さんを始め、絶対みた方が良いとの評判がそこかしこから聞こえていたので劇場へ。
(スゴ本さんの記事はこちら)
なぜ『この世界の片隅に』を観てほしいのか: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
昭和20(1945)年、広島・呉。18歳で嫁いだ主人公すずさんの物語。徐々に徐々に、45年8月6日、そして8月15日に近づいていく。
すごいなあというか、そうだよなあと思ったのは、どんなに戦況が悪化し、空襲が激しくなっても、生活は続いていくんだということ。食わなきゃいけない。寝なきゃいけない。この視点にはすごくはっとさせられた。たとえ大切な人を失っても、明日はやってくる。その明日を、すずさんや家族のみんなは懸命に歩いて行く。
思い浮かんだ情景は、東日本大震災が起きた2011年3月の東京だった。当時、春から働く予定の会社で人手が足らなくなって、急に内勤に入ることに。そのとき、あんなにとてつもない災害の後も、こんなに駅のホームに通勤客があるもんなのかと驚いた。でもそれが本当だ。何があっても暮らしはやまない。すずさんたちも、連日続く空襲警報に睡眠を邪魔されて、辟易としながらも、ゆるゆると生きるほかない。
だからこそなのか、途中から涙が止まらなかった。本当は立ち止まりたくても、生きなくてはいけないのだ。生きたいのだ。でも生きていいのか?戦争に直面したときに、「家族の戦死」や「出兵の見届け」以上に、その先も残る生と葛藤が、市民の実際の苦難なのかもしれない。
ハンカチ必携。ぜひ観賞してほしい。余談で、すずさんの生きる強さは、フォレスト・ガンプに通じるものを感じた。こちらもいい映画。