2016年ベストバイ ノンフィクション編
2016年「買って良かった」「読んで良かった」を紹介する、ベスト・バイ。続いてノンフィクション編。
ブラッドランド 上: ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実 (単行本)
- 作者: ティモシースナイダー,Timothy Snyder,布施由紀子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/10/15
- メディア: 単行本
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ドイツ史とロシア史のはざまで、あるいは世界史の断片でしか語られてこなかった東欧地域の大量虐殺、大量餓死を、膨大な資料を編み上げることで浮かび上がらせた一冊。遠くの人から奪われる、見ていないから消される。その怖さたるや。
◎「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後」
八紘一宇を、本当の意味で実現しようと学びあった若者がいた。戦後70年が過ぎようとする中で、記者が書いてくれてほんとうに良かった。彼らの人生を俯瞰するだけでなく、飛び込んで、歩みを交えながら、至近距離で捉えている。
◎「地球を『売り物』にする人たち」
地球温暖化は環境問題だけにあらず、ビジネスでもある。著者はその事実をあくまで事実として描き出す。大事なのは、けしからんと批判することではなく、ビジネスと絡み合ってでしか、環境政策は語れないんだと知ることだ。写真も印象的な一冊。
◎「黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実」
- 作者: リチャードロイドパリー,Richard Lloyd Parry,濱野大道
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「す、すごい」のひと言しかでない、圧倒的な取材力。海外ジャーナリストが長大な時間を掛けて、異国の女性殺害事件を追った。日本メディアでタブー視される在日外国人の問題にも切り込む。
◎「裁かれた命 死刑囚から届いた手紙」
国によって死を宣告された一人の青年の歳月とその後を周辺取材から描き出す。命が別の命に残した痕跡は、いつまでもほのかな痛みと体温が消えない。
◎「こつ」と「スランプ」の研究
「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学 (講談社選書メチエ)
- 作者: 諏訪正樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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言語化と身体動作の無意識化。この相互作用について分かりやすい語り口で伝えてくれている。スポーツに限らない。何かを極めようと思ったときに、道しるべをくれる一冊だった。
◎「デジタル・ジャーナリズム」は稼げるか
この本もいずれ古くなってしまうんだろうと危機感を抱かせる。めまぐるしく展開するネットビジネスにジャーナリズムの活路はあるのか。いつまでもただの情報に金を払ってもらえるわけではない
◎「ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度」
ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-12)
- 作者: ジョン・クラカワー,菅野楽章
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2016/09/28
- メディア: 単行本
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改めて書評を書きたい。レゴのように、淡々と事実を積み上げていく手法で、レイプをめぐる社会の病巣を白日にさらした迫真の書。
◎「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか」
タイトルがど真ん中ストレートをつく、魂のノンフィクション。「公正中立」をはき違えた全ての大人にたたきつけたい。沖縄で地に足を付けて働く報道人の叫びが聞こえてくる。
◎「〈インターネット〉の次に来るもの」
テックの書ではなく、哲学の書といえるのではないか。急スピードで変革するインターネット、その先の技術を水先案内する「概念」を示してくれる。その変化は、もう始まっている。適応せよ。