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読書録K

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

読後こそ楽しいサスペンス―「出版禁止」

 日本中のラジオがいつでも聴けるアプリ「radiko(ラジコ)」で知ったDJに、浅井博章さんがいる。大阪のFM802で毎週日曜日、「モーニングストーリー」と銘打ち、おすすめの本や映画を紹介。読書家の浅井さんがストーリーテラーになる作品はどれも面白くて、本書「出版禁止」もその一冊だった。

出版禁止 (新潮文庫)

出版禁止 (新潮文庫)

 

  サスペンスにあたるミステリー小説。帯では本仮屋ユイカさんが「裏切られた!!」と書いていらっしゃるが、まさに裏切る仕掛けが随所に施されている。しかしながら一番面白いのは、途中でもラストでもなく「読後」かもしれない。

 作者の長江俊和さんは「放送禁止」というテレビ番組のクリエイターだそうだ。一見ドキュメンタリーだが、実はフィクションという、フェイクドキュメンタリーと呼ばれるまさに「裏切り」の作品を放送。見たことがないのが何とも悔やまれるが、出版禁止を読むとさぞや凄いんだろうなと想像する。「出版禁止」もスタイルは踏襲し、小説だけれど、あたかもノンフィクションのような筆で進んでいく。

 

 語り手の長江俊和(著者と同名)は、ライター若橋呉成が書いた「カミュの刺客」という未発表のノンフィクション作品の草稿を手にする。社会派ドキュメンタリー作家が山荘で不倫女性と心中する事件を追ったものだが、出版直前で差し止め=出版禁止になった文章作品だ。

 事件では男女ともに病院搬送され、女性だけが一命を取り留めた。裏表紙のあらすじでは「なぜ女だけが生還したのか」と書かれているが、若橋はこの生還にきな臭さを感じて、取材を始めた模様だ。

 心中は愛の末路なのか、それとも仕組まれた事件なのか―。これが主題であり、本仮屋さんの「裏切られた」もこの間の「何か」だと信じていたのだが・・・。まさに裏切られた。全然予想しない方向に進んでいく。

 

 こういう作品は読み終えて「なるほどなーーー!!!」となるのが普通。でも自分は、「え」となってしまった。読み返しても分からない。鈍感なのか。どういうこと?頭に謎が浮かんで、結果、「出版禁止 真相」とか「出版禁止 考察」とグーグルに打ち込み、しばらく作品を読み込んだ先輩のサイトをうろつき、ようやく「そういうことかー!!」

 ただ、それでも誰もが謎の全てを解き明かせておらず、その解釈を比べて自分なりの謎解きをするのが、また楽しい。感覚としては「ゼルダの伝説時のオカリナ)」や「マザー2」に近い気がする。風車のおっさんや、どせいさんの存在が結局ふわふわとした怪しさをたたえ続けるように、「出版禁止」に埋め込まれた謎をずっと転がしていたいような、そんな気持ちになる。

 

 読んでも楽しいし、読んだ後も楽しい。間違いない。ちなみに、読後に参照したサイトは以下。ネタバレを含むので、読後までは開かないでほしい。

 

ukarino.hatenablog.com

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