読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

ノンフィクション-仕事・人生に活きる

最高に格好いい裏方がいるー読書感想「PIXER」(ローレンス・レビーさん)

「PIXER(ピクサー)」を、財務面で支えた最高に格好いい裏方がいる。その本人ローレンス・レビーさんが苦闘に明け暮れた日々を振り返ったのが本書「PIXER 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」だ。CGアニメがまだ世になく、収益性は…

感覚の言葉より内臓の言葉ー読書感想「ひきこもれ」(吉本隆明さん)

「ひきこもれ」を読んで、なぜツイッターでつぶやき続けても満たされないことがあるのか分かった気がする。どうして人に対して徹底的に攻撃的な人がいるのかも分かった気がする。思想家・吉本隆明さんが語るところを、梯久美子さんの構成で文章化した本で、…

具体的で小さな戦術ー読書感想「『空気』を読んでも従わない」(鴻上尚史さん)

アエラドットの人生相談コーナーの回答を見ていつも唸らされていたのが、作家で演出家の鴻上尚史さんだった。その鴻上さんが「どうして周りの目が気になるの」「人間関係が息苦しいの」という思春期の子どもたちの不安に答える形でまとめた本が「『空気』を…

辞める時も辞めない時も大事なことー読書感想「決断」(成毛眞さん)

「決断」は会社を辞めるにしても辞めないにしても大事なことを教えてくれる。それは「判断軸」。「キャリアの時間軸を自らハンドリングすること」「仕事以外の『場』を持つこと」「ダメなスキルを溜めないこと」といったキーワードを学び、判断軸を養える本…

地位財をめぐる軍拡競争ー読書感想「幸せとお金の経済学」(ロバート・H・フランクさん)

「幸せとお金の経済学」は、幸せになるための消費の秘訣を教えてくれる。ワンセンテンスで言うと「地位財より非地位財へお金を使おう」。地位財とは「他人との比較で価値が生まれるもの」。非地位財は「他人が持っているかに関係なく、それ自体に価値があり…

強いとはあなたがあなたでいることー読書感想「メンタルが強い人がやめた13の習慣」(エイミー・モーリンさん)

メンタルが強いとはどういうことだろうか?サイコセラピストでライターのエイミー・モーリンさんは「どんな運命が降りかかろうとも、自分の価値観に従って生きること」と定義する。そして、その強さのためには何かを「する」よりも「やめる」ことが重要だと…

幸福とは「何を見るか」ー読書感想「幸せな選択、不幸な選択」(ポール・ドーランさん)

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授ポール・ドーランさん(行動科学)の知見を総動員し、「人はどうしたら幸せになれるのか」を探求した本が「幸せな選択、不幸な選択 行動科学で最高の人生をデザインする」だ。その要諦は「何を見るか」。ドーラ…

意味ベースでいこうー読書感想「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤亜紗さん)

目が見えないということは欠落ではない。見える人にとっての世界と、見えない人にとっての世界は違う。そこに優劣はない。あるのは「意味」の異なり。見える/見えないをビットのあるなしのように「情報」ベースで捉える考え方から、「意味」 ベースに考え方…

分からないのは豊かなことー読書感想「考えるとはどういうことか」(梶谷真司さん)

「分からない」のは恥ずかしいことじゃない、むしろ豊かなことだ。「問い」を多く持ち、さらに問い続けることこそ、人を自由にする。哲学者・梶谷真司さんは「考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門」で、こう伝えてくれている。 本書の…

幸せは成功に先行するー読書感想「ハーバード流 幸せになる技術」(悠木そのまさん)

成功するから幸せになるわけではない。むしろ、幸せは成功に先行する。いますぐに、具体的に幸せになることは可能で、そんなポジティブな状態こそ成功を呼び込むことさえある。ワークスタイルデザイナー悠木そのまさんが、ポジティブ心理学や脳科学の大家か…

「本当の自分」から「自分のほんとう」へー読書感想「愛の本」(菅野仁さん)

本当の自分を探しても見つかりはしないだろう。そうじゃない、自分にとっての「ほんとう」を探そう。自分がどうすれば「生きることの味わい」を感じられるのか。そのために外へ出よう。他者と関わろう。社会学者菅野仁さんの「愛の本」はそんな転回を呼び掛…

長い長い鎖の小さな輪ー読書感想「羊飼いの暮らし」(ジェイムズ・リーバンクスさん)

「羊飼いの暮らし」はイギリスで600年以上続く羊飼いの家系をつなぐジェイムズ・リーバンクスさんのエッセーだ。リーバンクスさんは言い切る。私の名前など残らなくていい。100年後も羊飼いの仕事が続いていれば、その土台のほんの一部が自分なんだろ…

自衛隊に学ぶストレス管理ー読書感想「心の疲れをとる技術」(下園壮太さん)

戦場以上にブラックな職場はきっとない。しかも負けは許されない。そんな究極の仕事に臨む人たちのストレス管理は一体どうなっているのか。本書「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れを取る技術」はその一端を垣間見せてくれる。 著者の下園壮太さんは、元…

人はなぜ知ったかぶるのかー読書感想「知ってるつもり 無知の科学」(S・スローマンさん&P・ファーンバックさん)

人間はどうしてここまで進化したのか。複雑なビルを建設し、原子力を生み出せたのはなぜか。賢さ、知性があり、それを磨いてきたことが大きい。しかし、人間は時に大きな過ちも犯す。「知ったかぶり」をしてしまうし「知っていると思い込む」ことも少なくな…

普通のおじさんの非凡な言葉ー読書感想「パリのすてきなおじさん」(金井真紀さん)

「パリのすてきなおじさん」は文字通り、パリの街角にいるすてきなおじさんのインタビューを集めた、おじさん図鑑だ。誰も彼もすてきだけれど、特別じゃない。働いて、遊んで、失恋したり泣いたりして。普通の人生を一生懸命歩いてきたおじさんの言葉はだけ…

ネットワーク科学の専門家が紐解く人間関係論ー読書感想「私たちはどうつながっているのか」(増田直紀)

信用の時代だと言われている。ネットワーク・つながりをどうすれば豊かにできるか、誰もが知りたいと思っている。一方で、その方法論はインフルエンサーの個人的経験が多くて、どうにも再現可能性が低いようにも思えてしまう。そこで本書が役に立つ。脳理論…

ABTの三文字が伝え方を劇的に変えるー読書感想「なぜ科学はストーリーを必要としているのか」(ランディ・オルソン)

上手に伝えるために必要なことはたった1つ、ストーリーを学ぶことだ。 自分を含め多くの人が、うまく伝えられずに悩んでいる。伝えるべきことはたくさん思いつくのに、その十分の一すら伝えられていない。だけど、世の中には伝えるプロがいる。それがハリウ…

ジャージの君へー読書感想「ナナメの夕暮れ」(若林正恭)

この本は「人生」という試合の舞台になかなか乗っかれない人のためにある。思い通り試合を運べないとか、勝てないとか、そんなレベルじゃなくて。そもそもユニフォームを着られずに、ジャージ姿で舞台の脇に立ちすくんでいる人のためにある。お笑いコンビ・…

会社は家族からチームになるー読書感想「NETFLIXの最強人事戦略」(パティ・マッコード)

会社は「管理」で出来ている。大量生産・大量消費社会にあっては、従業員の勤怠管理を徹底し、ヒエラルキー型の組織人事を徹底することで、効率的に経済活動を行えた。しかし、21世紀は「変化」の時代になった。管理は組織を硬直化させ、ルールの数々はむ…

世界はシャボン玉ー読書感想「ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと」(奥野克巳)

「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えない人がいるとすれば、日本では「ダメな人」として扱われるだろう。でも、どちらも「いらない」社会がある。「ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと」は、それを教えてくれる。 …

履歴書より追悼文ー読書感想「あなたの人生の意味」(デイヴィッド・ブルックス)

人間には2つのプロフィールがある。履歴書と、追悼文である。履歴書はあなたがいかに有能かを華やかに語る。一方で追悼文にはあなたが「どう生きてきたか」が表れる。私たちはいつも履歴書を気にするけれど、大切なのは追悼文なんじゃないか、と問うのが本…

共を厚くするー読書感想「広く弱くつながって生きる」(佐々木俊尚)

公(パブリック)と私(プライベート)の間には、「共」という空間がある。共を厚くして、長い人生の旅路をもっと生きやすくしていく。そんな考え方を教えてくれたのが、ジャーナリスト佐々木俊尚さんの「広く弱くつながって生きる」だった。 200ページ弱…

本と本屋を愛する人へー読書感想「これからの本屋読本」(内沼晋太郎)

「これからの本屋読本」は、本と本屋を愛する人へ向けられた本だ。本に関する様々な企画を主宰する「NUMABOOKS」代表で、ビールが飲める書店「本屋B&B」を運営している内沼晋太郎さんの著作。 出版不況、活字離れと言われ久しい。それでも、なぜ我々は本を…

何度でもその日に備えるー読書感想「働く大人のための「学び」の教科書」(中原淳)

大人になったら誰も、「勉強の仕方」を教えてはくれない。だから私たちは、本書「働く大人のための『学び』の教科書」を開くのだ。 人材開発、リーダーシップ開発をアカデミックの目線で研究してきた中原淳さん(出版時:東京大学・大学総合教育研究センター…

システム1は止められないー読書感想「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)

人間には2つのシステムがある。それがノーベル賞を受賞した経済学者、ダニエル・カーネマンさんが「ファスト&スロー」で伝えてくれる、一番シンプルで、一番ドラスティックな教訓だ。「システム1」は働き者で、ファストな判断をしてくれるものの、様々な…

学ぶと楽しく生きられるー読書感想「『行動経済学』人生相談室」(ダン・アリエリー)

勉強が苦手だというひとには、この「『行動経済学』人生相談室」をおすすめしてみてほしい。深夜ラジオのように、学者さんのダン・アリエリーさんが様々なお悩みに答えてくれる。彼の専門、行動経済学は、恋から資産運用、引っ越しもお昼のビュッフェも、ち…

悩むより考えるー読書感想「イシューからはじめよ」(安宅和人)

問題を前に悩むより、それが本当に「問題か」を考えよう。ヤフー・チーフストラテジーオフィサーの安宅和人(あたか・かずと)さんの「イシューからはじめよ 知的生産の『シンプルな本質』」は、「問題解決」以前の「問題設定」の重要性を説く。そのイシュー…

国難を国恵にー読書感想「日本再興戦略」(落合陽一)

国難を、国の恵みにすることは可能である。 落合陽一さんの最新著作「日本再興戦略」は、そう高らかに歌い上げる。少子高齢化を「チャンス」と捉える。テクノロジーを学び、「機械と人間の融合」の可能性を受け止める。そして「ポジションを取り」、逐次的に…

なぜストレスが溜まるのか?ー読書感想「STOP STRESS」(マリーネ・フリース・アナスンら)

なぜストレスは溜まるのか? どうすればストレスをコントロールしながら働けるのか? その疑問に理論的な回答をくれたのが、「STOP STRESS 北欧の最新研究によるストレスがなくなる働き方」だった。長年、デンマークなどでストレスを研究してきたマリーネ・…

スキマの力ー読書感想「うしろめたさの人類学」(松村圭一郎)

息苦しいなら、スキマをつくればいい。文化人類学者・松村圭一郎さんの「うしろめたさの人類学」は、日本の社会に閉塞感を感じる人に、言われてみればシンプルなアイデアを投げかけてくれる。絡まった糸を解きほぐすきっかけに、松村さんが専門のエチオピア…