小説-SF
女性だけが特殊な腕輪を装着させられ、1日100語以上を喋ると強烈な電流を浴びせられる。女性の声を奪ったディストピア社会を描くのが、クリスティーナ・ダルチャーさんのSF小説「声の物語」だ。 一部の女性が出産のための道具として使われるというSF小説「侍…
ある日、女性が手のひらから電撃を放てるようになった。まるでデンキウナギのように。本気を出せば、男性の命さえも奪えるようになった。裸一貫で、手ぶらで。じわじわと、男性優位の世界は転回を始める。ナオミ・オルダーマンさんの「パワー」は痛快な男女…
小説「東京の子」はアフター2020をどう生きるか、を読者に問い掛ける。五輪は終わった。どうにも使いきれないレガシーが残った。すっかり東京は「国際都市」へ変貌した。足元の雇用は溶け出していく中で、理想なのかどうか判別できないビジョンが立ち上がっ…
SF小説を読んでみたいけれど、なんだか難しそうだと尻込みする気持ちもある。そもそも何から読めばいいか。そんな悩みを持つ人に本書はうってつけ。アンソロジー「NOVA 2019年春号」はSF初心者にとってサーチライトになる。 各作品50ページほどでさくっと読…
このSF小説に描かれている出来事は12時間後に実際に起きているかもしれない。藤井太洋さんの「ハロー・ワールド」はそのぐらい、超近接未来を克明に語る。物語をつくる大道具は、ドローン配送や自動運転車、ツイッター、仮想通貨などなど。帯の惹句にある…
意思に反して、突然、世界のどこかへテレポーテーションしてしまう奇病「量子病」になった女性の物語。王城夕紀さんの「マレ・サカチのたったひとつの贈物」は、SFの世界観の中で、明日にもその場に留まれず、何も「残せない」「積み上げられない」生に意味…
これはディストピア小説を超えたポスト・ディストピア小説だ。小川哲さんのSF小説「ユートロニカのこちら側」は、読者に新しい地平を見せる。あらゆる情報を吸い上げる代わりに、極上の生活と、完璧な安全を保証した理想都市。そこで生きることは幸福以外…
クメール・ルージュによるカンボジアでの大虐殺と、その中を歩く人生を、半世紀あまりの時間軸で描く。小川哲さんのSF小説「ゲームの王国」の主題は壮大だ。遊びのゲームをどうすればより楽しくできるかを考える神童ムイタックと、この国の政治ゲームをなん…
「トランプ政権の未来がここにある」。帯の惹句の強烈なインパクトに痺れて手に取ったディストピア小説が、マーガレット・アトウッドさんの「侍女の物語」だった。特定の女性が「子どもを産むための道具」のように扱われる管理社会。効率性や人権の抑圧を煮…
情報をシェアすることは善?ーイエス。他人に秘密を持たないことも善?ーイエス。誰かのアクションに「いいね!」することは?ーイエス。じゃあそれらを、全部、完璧に追求したら、それも善、だよね? ソーシャルでオープンな善をひたすら(n個)積み上げて…
「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」。中村文則さんの最新作「R帝国」の書き出しは、たった一言で物語に引き込む。そこからはもう、目が離せない。このディストピア小説の恐ろしさは、いま、社会の憎悪(ヘイト)を増幅した先に、こんな絶望的な世界が起…
近未来を描きつつ、「人類はどこから来たのか」という「未知の過去」に果敢に挑んだSF小説が、佐藤究さんの「Ank: a mirroring ape」だった。突如として人間が狂い、隣人と殺し合いを始めた《京都暴動(キョート・ライオット)》。その原因はウイルスでも…
アメリカの少女が森の地中から発見したのは、合金製の巨大な「手」だったー。タイトル「巨神計画」で、そして上下巻の表紙にまたがる緑色の怪しい「巨人」の姿で、そそられないわけにはいかない。ジャケ買いして正解です。とんでもない謎解きが、すさまじい…
地球から離れた月面で、いるはずのない5万年前の「人間」の遺体が見つかった。どこから来たのか、我々地球人と同じなのか?―。本書「星を継ぐもの」は壮大な謎に遭遇する物語であり、その未知への向き合い方を教えてくれる作品だ。