ノンフィクション
「PIXER(ピクサー)」を、財務面で支えた最高に格好いい裏方がいる。その本人ローレンス・レビーさんが苦闘に明け暮れた日々を振り返ったのが本書「PIXER 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」だ。CGアニメがまだ世になく、収益性は…
大国は自壊する。崩壊は内側から始まる。外部の侵略や打倒は衰退の原因ではなく徴候である。「なぜ大国は衰退するのか 古代ローマから現代まで」は、ローマ帝国、明(中国)、オスマン帝国、イギリス、カリフォリニア州など、豊富な事例でこの事実を明らかに…
「ひきこもれ」を読んで、なぜツイッターでつぶやき続けても満たされないことがあるのか分かった気がする。どうして人に対して徹底的に攻撃的な人がいるのかも分かった気がする。思想家・吉本隆明さんが語るところを、梯久美子さんの構成で文章化した本で、…
「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した」は、イギリスの記者ジェームズ・ブラッドワースさんが国内の最低賃金の労働現場に潜入し、その内幕を告発した一冊になる。明らかにされるのは、中間的な所得を保証し、人間的な営みのある「尊厳ある仕事…
アエラドットの人生相談コーナーの回答を見ていつも唸らされていたのが、作家で演出家の鴻上尚史さんだった。その鴻上さんが「どうして周りの目が気になるの」「人間関係が息苦しいの」という思春期の子どもたちの不安に答える形でまとめた本が「『空気』を…
「決断」は会社を辞めるにしても辞めないにしても大事なことを教えてくれる。それは「判断軸」。「キャリアの時間軸を自らハンドリングすること」「仕事以外の『場』を持つこと」「ダメなスキルを溜めないこと」といったキーワードを学び、判断軸を養える本…
「幸せとお金の経済学」は、幸せになるための消費の秘訣を教えてくれる。ワンセンテンスで言うと「地位財より非地位財へお金を使おう」。地位財とは「他人との比較で価値が生まれるもの」。非地位財は「他人が持っているかに関係なく、それ自体に価値があり…
経済学者・井上智洋さんの「純粋機械化経済 頭脳資本主義と日本の没落」は、「サピエンス全史」並みの話題書になるはずだ。そのぐらいのインパクトがある。本書は、AIによる時代変化を、テクノロジー論、経済論、未来予測だけでなく「人類史」のスコープで超…
ヘイトが溢れている今だからこそ、本書「アイデンティティが人を殺す」を読む意味がある。分断されないために、憎しみ合わないために、この本のアイデンティティ論を学びたい。 著者はレバノンで生まれ、内戦を機にフランスへ移住した作家アミン・マアルーフ…
メンタルが強いとはどういうことだろうか?サイコセラピストでライターのエイミー・モーリンさんは「どんな運命が降りかかろうとも、自分の価値観に従って生きること」と定義する。そして、その強さのためには何かを「する」よりも「やめる」ことが重要だと…
何かをしてばかりいる。どこかを目指して、何かを目指してばかりいる。自分の生活には「する」がギュウギュウになって、ただ「居る」ことなんてほとんどないな。「居るのはつらいよ ケアとセラピーの覚書」は「居る」を取り出して、よくよく見つめて、その奥…
生物とは利己的な遺伝子が生き延びるために使う乗り物である。生物学者リチャード・ドーキンスさんの「利己的な遺伝子」の言説はこのワンセンテンスに集約される。この刺激的なメッセージを、400ページ余り使って大きく展開する。1976年の初版なのに、今読ん…
自殺件数が相対的に少ない「自殺希少地域」というものがある。そこではなぜ自殺が少ないのだろうか? 精神科医森川すいめいさんが、実際に現地を旅して感じた学びをアカデミックな知識と結びつけながら綴ってくれた本が「その島のひとたちは、ひとの話をきか…
「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?」は、残業のメカニズムを明らかにする本だ。残業は個人の能力の問題でもないし、止むを得ず発生する現象でもない。残業は解剖できる。原因を構造化できる。その上で、効果的に対策を打っていくことは可…
日本政府は、日本に移民がいることを否定する。データを丁寧に紐解けば日本が移民国家であるのは明らかなのに、頑なに否認する。望月優大さんの「ふたつの日本 『移民国家』の建前と現実」は、そんな態度に真っ向から相対する。移民を否認することは、人間を…
人間は「新しい本能」をつくることができる。本書「生き残る判断 生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか」が示してくれる希望はそこにある。人間の認知・身体的な本能は、現代の災害下では時に不利になる。だけど、知性的…
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授ポール・ドーランさん(行動科学)の知見を総動員し、「人はどうしたら幸せになれるのか」を探求した本が「幸せな選択、不幸な選択 行動科学で最高の人生をデザインする」だ。その要諦は「何を見るか」。ドーラ…
目が見えないということは欠落ではない。見える人にとっての世界と、見えない人にとっての世界は違う。そこに優劣はない。あるのは「意味」の異なり。見える/見えないをビットのあるなしのように「情報」ベースで捉える考え方から、「意味」 ベースに考え方…
この人は未来を変えるかもしれない。「20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る」を読んでワクワクした。著者の合田真さんを知れて、その頭の中を覗けて、興奮が収まらない。 合田さんが構想するのは「金利…
「分からない」のは恥ずかしいことじゃない、むしろ豊かなことだ。「問い」を多く持ち、さらに問い続けることこそ、人を自由にする。哲学者・梶谷真司さんは「考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門」で、こう伝えてくれている。 本書の…
成功するから幸せになるわけではない。むしろ、幸せは成功に先行する。いますぐに、具体的に幸せになることは可能で、そんなポジティブな状態こそ成功を呼び込むことさえある。ワークスタイルデザイナー悠木そのまさんが、ポジティブ心理学や脳科学の大家か…
男性が女性に説教することはもっとも小さな独裁主義である。それは女性を無知で無力な存在だと断定し、さらには「道具」のように扱うことをよしとする。たかが説教ではないんだと、「説教したがる男たち」を読めば分かる。 これは自身が女性として、あるいは…
本当の自分を探しても見つかりはしないだろう。そうじゃない、自分にとっての「ほんとう」を探そう。自分がどうすれば「生きることの味わい」を感じられるのか。そのために外へ出よう。他者と関わろう。社会学者菅野仁さんの「愛の本」はそんな転回を呼び掛…
世界は悪くなっているように感じられる。しかし、観測可能なデータを見る限り、世界は過去に比べて良くなっているのだ。貧困に苦しむ人、大人になる前に命を落とす子どもの数は減り、女子教育、インターネットへのアクセスは増えている。世界が良くなってい…
「羊飼いの暮らし」はイギリスで600年以上続く羊飼いの家系をつなぐジェイムズ・リーバンクスさんのエッセーだ。リーバンクスさんは言い切る。私の名前など残らなくていい。100年後も羊飼いの仕事が続いていれば、その土台のほんの一部が自分なんだろ…
戦場以上にブラックな職場はきっとない。しかも負けは許されない。そんな究極の仕事に臨む人たちのストレス管理は一体どうなっているのか。本書「自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れを取る技術」はその一端を垣間見せてくれる。 著者の下園壮太さんは、元…
人間はどうしてここまで進化したのか。複雑なビルを建設し、原子力を生み出せたのはなぜか。賢さ、知性があり、それを磨いてきたことが大きい。しかし、人間は時に大きな過ちも犯す。「知ったかぶり」をしてしまうし「知っていると思い込む」ことも少なくな…
「パリのすてきなおじさん」は文字通り、パリの街角にいるすてきなおじさんのインタビューを集めた、おじさん図鑑だ。誰も彼もすてきだけれど、特別じゃない。働いて、遊んで、失恋したり泣いたりして。普通の人生を一生懸命歩いてきたおじさんの言葉はだけ…
信用の時代だと言われている。ネットワーク・つながりをどうすれば豊かにできるか、誰もが知りたいと思っている。一方で、その方法論はインフルエンサーの個人的経験が多くて、どうにも再現可能性が低いようにも思えてしまう。そこで本書が役に立つ。脳理論…
上手に伝えるために必要なことはたった1つ、ストーリーを学ぶことだ。 自分を含め多くの人が、うまく伝えられずに悩んでいる。伝えるべきことはたくさん思いつくのに、その十分の一すら伝えられていない。だけど、世の中には伝えるプロがいる。それがハリウ…