読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

論理的狂気ー読書感想「革命のファンファーレ」(西野亮廣)

絵本の全文をネット公開、テレビ収録中に途中退席、著作権放棄ー。数々の「クレイジーと言われる」所業を重ねながらも、著作のメガヒットを連発している芸人・西野亮廣さん。その頭の中を自ら解説してくれた一冊が「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」…

居場所はきっとあるー読書感想「ふたご」(藤崎彩織)

10代の頃、誰しも悩んだと思う。なぜ生きているのか。自分は必要な人間なのか。大切な人を、大切にできるだろうか。そんな問いに繊細な筆致で向きあう作品が、藤崎彩織さんの初小説「ふたご」だ。藤崎さんは、バンド「SEKAI NO OWARI」のピアニストであり…

編集会議17年秋冬号「シン・編集力」が本好きに超オススメだった

雑誌「編集会議」の2017年秋冬号「特集・シン編集力」(10月16日発行)が、読書ファン・本好き必見の超面白い内容だったので、紹介したいと思います。前半に「2017年ヒット本を生んだ『編集力』」などと題して、堀江貴文さん「多動力」や、西野…

レッツもやもやー読書感想「誰も教えてくれない大人の性の作法」(坂爪真吾・藤見里紗)

子どもの頃は「タブー」だったのに、大人になると「必須科目」。それが「性」である。だから大人こそ、性の問題に迷う。その難問に向き合う糸口を、本書「誰も教えてくれない大人の性の作法(メソッド)」は示してくれる。未婚化、晩婚化、セックスレス、不…

声に耳をー読書感想「Black Box」(伊藤詩織)

この国はまだ、性被害者の「苦しい」「つらい」という声を聞ける社会ではないのかもしれない。ジャーナリスト伊藤詩織さんが自身の体験をレポートした「Black Box ブラックボックス」を読んで抱いた思いだ。加害を訴えた男性が不起訴処分となり、検察審査会…

ヘイトの先ー読書感想「R帝国」(中村文則)

「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」。中村文則さんの最新作「R帝国」の書き出しは、たった一言で物語に引き込む。そこからはもう、目が離せない。このディストピア小説の恐ろしさは、いま、社会の憎悪(ヘイト)を増幅した先に、こんな絶望的な世界が起…

レジリエンスを学ぶー読書感想「OPTION B」(S・サンドバーグ)

苦しみからもう一度生き直す力「レジリエンス」を、これ一冊で深く深く学べる。「OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び」は、著者でフェイスブックCOOでもあるシェリル・サンドバーグさんが、突然直面した最愛の夫の死にどう向き合ったかを記した苦闘の…

人生は私のものー読書感想「最低。」(紗倉まな)

「エロ屋」を看板にする女優紗倉まなさんのデビュー小説「最低。」は、胸をえぐるヒューマンストーリーだった。AVが何らかの形で人生に関わる「彩乃」「桃子」「美穂」「あやこ」4人を軸にした、連作短編集。好奇の眼差しや、偏見、後ろ指があふれるAV制作…

大動脈ー読書感想「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」(S・ヴェンカテッシュ)

「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」のタイトル通り、コロンビア大学の社会学教授スディール・ヴェンカテッシュ氏が、大都市ニューヨークの「裏側」に飛び込んだノンフィクションである。ヴェンカテッシュ氏はシカゴでも同様に、10年間に…

人類起源探求SFー読書感想「Ank:」(佐藤究)

近未来を描きつつ、「人類はどこから来たのか」という「未知の過去」に果敢に挑んだSF小説が、佐藤究さんの「Ank: a mirroring ape」だった。突如として人間が狂い、隣人と殺し合いを始めた《京都暴動(キョート・ライオット)》。その原因はウイルスでも…

ゆったりゲリラ―読書感想「ナリワイをつくる」(伊藤洋志)

超競争社会を生きるための、ゆったりしたゲリラ戦略の参考書が伊藤洋志さんの「ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方」だ。グルーバル市場で勝ち抜ける自信も、AI時代に淘汰されない確信もないという「非バトルタイプ」にこそ読んでほしい。「頑張ろう…

生きていける―読書感想「未必のマクベス」(早瀬耕)

今週のお題「読書の秋」 この物語を読んだことは、いつかきっと大切な思い出になる。早瀬耕さんの小説「未必のマクベス」はそう断言できるくらいの、極上の読書体験を届けてくれる。恋愛小説であり、犯罪小説であり。立ちこめる霧のように優しく幻想的な世界…