success!!ー読書感想「ネコノヒー」(キューライス)
小説でもノンフィクションでもなく、漫画だけど紹介したい。止むに止まれずそうしちゃう気持ちを呼び起こすのが、キューライスさんの4コマ漫画集「ネコノヒー」です。たいていのことがうまく運ばないぽっちゃりネコのネコノヒーの日々。かわいそうなんだけど愛らしい「かわいそかわいい」が沁みます。たまにある「success!!」で、ネコノヒーは幸せになれる。そんな姿にいっぱい救われます。KADOKAWA。
ちょっと落ち込むだけ
ネコノヒーはとにかく何でも失敗する。表紙では、卵かけご飯の卵をお茶碗の上に乗せられない。ピーマンの肉詰めをつくると、肉がピーマンからこぼれ落ちちゃう。餃子をタレにつけたら中身が皿に出ちゃう。超ドジっ子、いやドジネコ。
だけど、4コマの中のネコノヒーはたいてい、「ちょっと落ち込むだけ」で終わる。それがいい。泣きわめかない。大逆転もない。「あれま」って感じでちょっと眉を寄せて、次の4コマではまた違う失敗をする。
こんな感じで過ごしたいと思う。失敗したら「あれま」。そのぐらいでいい。明るく振る舞わなくっってもいい。ネコノヒーを見てると、そう思える。
待ってたら幸せがきちゃう
ネコノヒーは時々、success!!する。キャンプに行ったら大雨で、一日中テントにいなきゃいけないけど、夜にはなんだか晴れて、満天の星空が見えたりする。卵かけご飯も、次は成功したのか、パラレルワールドなのか、ちゃんとご飯の上にオンできて、success!! できたりする。
一番好きなのは「信長」という作品のようなパターン。草履を温めておこうと思ったんだろうけど、廊下で鼻ちょうちんをつけて寝込んじゃったネコノヒー。それを見た信長は風邪をひかないよう、布をかけてあげちゃう。
ネコノヒーは幸せをつかみにいかない。というかつかみに行くと、ドジが待ってる。でも待ってたら、来ちゃう。幸せが。そんなものなのかもしれないな。
ウェブで読めるけど紙もいい
ネコノヒーは作者キューライスさんのツイッターや、はてなブログで見ることができる。ネコノヒーのほかにも、いろんな「好きなもの」をアピールしてキューライスさんの漫画執筆を邪魔する「スキウサギ」、強面だけど終始一貫して優しい行動にはしる「チベットスナギツネの砂岡さん」ら、魅力的なキャラクターが待ってる。
でも、紙もいい。ちょっと厚めの質感が、ネコノヒーの感じとマッチする。めくれどめくれど、ネコノヒーが待ってる。和む。
今回紹介した本は、こちらです。
キューライスさんのブログはこちら。
ゆるさつながりで、伊藤洋志さんの「ナリワイをつくる」はいかがでしょうか?いくつもの小額な稼ぎ口=ナリワイをこしらえて、ゲリラ的に生きようという話。
ままならない主人公たちの歩みに、心がホッとなる作品。思い浮かんだのは佐藤多佳子さんが深夜ラジオを題材にした「明るい夜に出かけて」でした。感動とは違う、不思議な温もりが心に宿ります。