読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

死はなぜつらいのか?ー読書感想「死すべき定め」(A・ガワンデ)

死は、なぜつらいのか?そんな根本的な問いに向き合うきっかけをくれるノンフィクションが「死すべき定め 死にゆく人に何ができるか」だ。著者のアトゥール・ガワンデさんは米ブリンガムアンドウィメンズ病院の医師であり、ライターでもある。死は命の喪失で…

2017年新刊の小説・ノンフィクションから全力で10冊推す

今週のお題「読書の秋」 2017年もたくさんの素敵な本が登場しました。「読書メーター」で記録を始めた3月21日以降、読了した数は72冊(9月下旬時点)。このうち今年発売されたノンフィクション、小説、エッセイの中から、全力でオススメしたい10…

孤独の先の孤独ー読書感想「声をかける」(高石宏輔)

いったいこの胸の孤独は、いつ埋まるんだろう。本書「声をかける」を読み終えて、そんな切なさがこみ上げた。ある男性が、東京でひたすらナンパをしていくという話。著者は高石宏輔さんという方で、帯裏の紹介には、1980年生まれで慶応大学中退、いくつ…

機械親和性人間へー読書感想「超AI時代の生存戦略」(落合陽一)

次の時代へ、考え方や生き方を「アップデート」する方法を学ぶことが、本書「超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト」のテーマになる。著者は「現代の魔法使い」とも称されるメディアアーティストであり研究者、落合陽一さん。自身がプロ…

【本棚から】真夜中に読む5冊

真夜中は読書に格好の時間だ。早く結末を知りたい、とミステリーを一気読み。ひきこまれた恋愛小説を読了するころには、もう3時。秋の夜長。作中の夜に味わいがある、真夜中の空気感にぴったりだ、本棚からそんな5冊を紹介したい。 すべて真夜中の恋人たち…

超高速だまし小説―読書感想「ルビンの壺が割れた」(宿野かほる)

「絶対だまされない」と警戒する読者の上を行く。 そんな「だまし力」を持った小説が宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた」だ。ポップや帯の惹起は「あなたは絶対にだまされる」「結末のあと、もう一度読み直す」。最高レベルの警戒をもってしても、上手を…

まさに今ー読書感想「米朝開戦」(M・グリーニー)

まさに「米朝開戦」の恐れもある今、読みたいと手に取った一冊。 軍事スパイ小説の名手、故トム・クランシー氏のシリーズを後継したマーク・グリーニー氏による小説。「開戦」というタイトルだけれど、今回も水面下で展開するインテリジェンス(諜報)バトル…

【本棚から】学校に行きたくない君へ贈る5冊

学校に行きたくない、つらい。そんな時、読書は助けになる。 新学期が始まる9月1日などは、自ら命を絶つ子どもたちが多いという。いまも、苦しくて、追いやられている子がいるかもしれない。 潤沢ではないけれど、本棚から、そんな人へ贈る本を選んだ。 ①…

会話だけの小説―読書感想「燃焼のための習作」(堀江敏幸)

不思議な読書体験を与えてくれる小説が堀江敏幸さんの「燃焼のための習作」だ。本作には、展開も、伏線も、激動もない。約250ページ、あるのは淡々とした会話だけだ。それのなんと味わい深いこと。本作は話すことそれ自体の楽しみ、深みを教えてくれる。…

足元の宇宙―読書感想「ウォークス 歩くことの精神史」(レベッカ・ソルニット)

「歩く」という一点から、これほど知的な旅が広がるのか。作家レベッカ・ソルニットさんの「ウォークス 歩くことの精神史」はそんな驚きをくれる。歩くことは運動であり、進化であり、宗教であり、女性差別やセックスワークと不可分であり、政治的であり、近…