読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

なぜストレスが溜まるのか?ー読書感想「STOP STRESS」(マリーネ・フリース・アナスンら)

なぜストレスは溜まるのか? どうすればストレスをコントロールしながら働けるのか? その疑問に理論的な回答をくれたのが、「STOP STRESS 北欧の最新研究によるストレスがなくなる働き方」だった。長年、デンマークなどでストレスを研究してきたマリーネ・…

スキマの力ー読書感想「うしろめたさの人類学」(松村圭一郎)

息苦しいなら、スキマをつくればいい。文化人類学者・松村圭一郎さんの「うしろめたさの人類学」は、日本の社会に閉塞感を感じる人に、言われてみればシンプルなアイデアを投げかけてくれる。絡まった糸を解きほぐすきっかけに、松村さんが専門のエチオピア…

本に迷った時に頼れる「本の雑誌」

最近、「本の雑誌」さんを手に取り始めた。もうすぐバックナンバーになってしまうかもしれないが、2018年1月特大号(No.415)「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」は、紹介された本を実際に読んでみると傑作ばかり。増刊号の「おすすめ文庫王国2…

新封建制・雇用破壊・無責任ー読書感想「インターネットは自由を奪う」(アンドリュー・キーン)

これだけ便利なインターネットを礼賛することこそ簡単だが、反対に批判することは難しい。アンドリュー・キーンさんは、それを徹底的にやってのける。著書「インターネットは自由を奪う 〈無料〉という落とし穴」は、現在のネット経済を牽引するグーグルやフ…

手触りのある思考ー読書感想「あるノルウェーの大工の日記」(オーレ・トシュテンセン)

手を動かしながら考えるとは、どういうことか。「あるノルウェーの大工の日記」はタイトル通り、北欧のノルウェーで大工の親方をしているオーレ・トシュテンセンさんが日々の仕事や、そこで巡らせた思考を記録している。その思考が面白い。土埃がついて、傷…

AIは人の顔をするー読書感想「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」(山本一成)

人工知能(AI)ってこんなに面白いんだ! プロ棋士に初めて勝利した将棋プログラム「ポナンザ」の作者である山本一成さんの著書「人工知能はどのようにして『名人』を超えたのか? 最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本…

良好な体調維持に直結した3冊

今週のお題「体調管理」 2017年、この3冊のおかげで良好な体調を維持できた、といっても過言ではない実用書を紹介したいと思います。観点は筋トレ・睡眠・食事の3つ。それぞれ何を意識すれば、どう気をつければいいのか、3冊は具体的に教えてくれます…

クメール・ルージュと人生ー読書感想「ゲームの王国」(小川哲)

クメール・ルージュによるカンボジアでの大虐殺と、その中を歩く人生を、半世紀あまりの時間軸で描く。小川哲さんのSF小説「ゲームの王国」の主題は壮大だ。遊びのゲームをどうすればより楽しくできるかを考える神童ムイタックと、この国の政治ゲームをなん…

二人の「兄」ー読書感想「オブリヴィオン」(遠田潤子)

二人の「兄」の間で揺れる物語である。遠田潤子さんの小説「オブリヴィオン」は、この揺れ方に人生のあらゆる悲哀や困難、喜びや絶望を詰め込んだ。妻を殺害した罪で服役し、出所した森二。刑務所の外で待っていたのは、アングラ世界で生きる実兄の光一と、…

最良の上司のような本ー読書感想「ポスト平成のキャリア戦略」(塩野誠・佐々木紀彦)

良い意味で、もやもやする。「ポスト平成のキャリア戦略」は、このままの働き方でいいのかと悩むビジネスマンを揺さぶり、前進させてくれる。経営共創基盤(IGPI)取締役・塩野誠さんと、NewsPicks編集長・佐々木紀彦さんの対談。二人は読者を「煽り」まくる…

トライブを生きるー読書感想「ミレニアル起業家の新モノづくり論」(仲暁子)

1982年以降に生まれ、00年代で大人になった世代は「ミレニアル世代」と言われ、世界中に約20億人いるとされる。そのミレニアル世代の一人であり、ウォンテッドリー株式会社の最高経営責任者(CEO)、仲暁子さんが「ミレニアル世代を読み解く鍵」…

郷に入っては郷で闘うー読書感想「ソマリランドからアメリカを超える」(ジョナサン・スター)

郷に入っては郷に従わない、闘う。「ソマリランドからアメリカを超える 辺境の学校で爆発する才能」は、ソマリランドという圧倒的にユニークな郷で、アメリカ人起業家のジョナサン・スターさんが強烈なビジョンを持って奮闘する様を描く。その目標は、ハーバ…

野球は野球以外の全てー読書感想「夏の祈りは」(須賀しのぶ)

テスト勉強、性格、進路…。高校野球とは、野球以外の全てを左右してしまう。須賀しのぶさんの「夏の祈りは」を読んで感じるのは、スポーツのそんな魔力だ。一つの県立高校の甲子園を目指した戦いのクロニクルを、数十年にわたって綴る。須賀さんは野球をテー…

ナッジ・トゥ・ザ・ピープルー読書感想「シンプルな政府」(キャス・サンスティーン)

大きな政府か、小さな政府か、ではなく、シンプルな政府へ! オバマ政権で国家の規制を担当する「情報・規制問題室長」だった法学者キャス・サンスティーンさんの「シンプルな政府 ”規制”をいかにデザインするか」は、ポップで刺激的な「第三の道」を示す。…