読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

ノンフィクション

本に迷った時に頼れる「本の雑誌」

最近、「本の雑誌」さんを手に取り始めた。もうすぐバックナンバーになってしまうかもしれないが、2018年1月特大号(No.415)「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」は、紹介された本を実際に読んでみると傑作ばかり。増刊号の「おすすめ文庫王国2…

新封建制・雇用破壊・無責任ー読書感想「インターネットは自由を奪う」(アンドリュー・キーン)

これだけ便利なインターネットを礼賛することこそ簡単だが、反対に批判することは難しい。アンドリュー・キーンさんは、それを徹底的にやってのける。著書「インターネットは自由を奪う 〈無料〉という落とし穴」は、現在のネット経済を牽引するグーグルやフ…

手触りのある思考ー読書感想「あるノルウェーの大工の日記」(オーレ・トシュテンセン)

手を動かしながら考えるとは、どういうことか。「あるノルウェーの大工の日記」はタイトル通り、北欧のノルウェーで大工の親方をしているオーレ・トシュテンセンさんが日々の仕事や、そこで巡らせた思考を記録している。その思考が面白い。土埃がついて、傷…

AIは人の顔をするー読書感想「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」(山本一成)

人工知能(AI)ってこんなに面白いんだ! プロ棋士に初めて勝利した将棋プログラム「ポナンザ」の作者である山本一成さんの著書「人工知能はどのようにして『名人』を超えたのか? 最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本…

良好な体調維持に直結した3冊

今週のお題「体調管理」 2017年、この3冊のおかげで良好な体調を維持できた、といっても過言ではない実用書を紹介したいと思います。観点は筋トレ・睡眠・食事の3つ。それぞれ何を意識すれば、どう気をつければいいのか、3冊は具体的に教えてくれます…

最良の上司のような本ー読書感想「ポスト平成のキャリア戦略」(塩野誠・佐々木紀彦)

良い意味で、もやもやする。「ポスト平成のキャリア戦略」は、このままの働き方でいいのかと悩むビジネスマンを揺さぶり、前進させてくれる。経営共創基盤(IGPI)取締役・塩野誠さんと、NewsPicks編集長・佐々木紀彦さんの対談。二人は読者を「煽り」まくる…

トライブを生きるー読書感想「ミレニアル起業家の新モノづくり論」(仲暁子)

1982年以降に生まれ、00年代で大人になった世代は「ミレニアル世代」と言われ、世界中に約20億人いるとされる。そのミレニアル世代の一人であり、ウォンテッドリー株式会社の最高経営責任者(CEO)、仲暁子さんが「ミレニアル世代を読み解く鍵」…

郷に入っては郷で闘うー読書感想「ソマリランドからアメリカを超える」(ジョナサン・スター)

郷に入っては郷に従わない、闘う。「ソマリランドからアメリカを超える 辺境の学校で爆発する才能」は、ソマリランドという圧倒的にユニークな郷で、アメリカ人起業家のジョナサン・スターさんが強烈なビジョンを持って奮闘する様を描く。その目標は、ハーバ…

ナッジ・トゥ・ザ・ピープルー読書感想「シンプルな政府」(キャス・サンスティーン)

大きな政府か、小さな政府か、ではなく、シンプルな政府へ! オバマ政権で国家の規制を担当する「情報・規制問題室長」だった法学者キャス・サンスティーンさんの「シンプルな政府 ”規制”をいかにデザインするか」は、ポップで刺激的な「第三の道」を示す。…

降りたっていいー読書感想「START UP アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」(ダイアナ・キャンダー)

大切なのは、ゲームに参加し続けること。そのためには時に、ゲームを降りたっていいーー。起業家兼コンサルタントのダイアナ・キャンダーさんによる「START UP(スタートアップ) アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」のメッセージだ。日本では「ベ…

一人で始める働き方改革ー読書感想「「自分」の生産性をあげる働き方」(沢渡あまね)

働き方改革はいまここから、一人でも始められる。業務改善士・沢渡あまねさんの「『自分』の生産性をあげる働き方」は、そのためのガイドになる。労働生産性を上げるのは、単に労働を効率化するだけではない。自分らしく、豊かに、高度な人材になるための第…

1984はつくれるー読書感想「生きるための選択」(パク・ヨンミ)

北朝鮮の外交ではなく、社会を知りたい。そう思って手に取ったのが、13歳で母とともに決死の脱北をしたパク・ヨンミさんの自伝「生きるための選択」だった。ヨンミさんが描いているのは、ジョージ・オーウェルの「1984」のような世界。しかし、これは…

2017年「人生を揺さぶられた」10冊

「この本に人生を揺さぶられたな」。振り返って、そう思える出会いがあることが読書の醍醐味です。2017年に巡り会えた「揺さぶり本」10冊を紹介したいと思います。小説からノンフィクション、恋愛からレジリエンス、カウボーイからAI、沖縄から香港。…

0の力ー読書感想「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか」(相原孝夫)

モチベーションに関わらずパフォーマンスを出せることが最強である。人事組織コンサルタント相原孝夫さんの「仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか」は、そんな「モチベーション0.0」という革新的なアイデアを授けてくれる。決して煽りじ…

知の波状攻撃ー読書感想「9プリンシプルズ」(伊藤穰一、J・ハウ)

結論から言えば、この本はめちゃめちゃ難しい。たぶん5%も内容を理解していない。ただ、「理解する価値がある」ことだけはかろうじて分かる。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長の伊藤穰一さんが、ワイアード誌の元エディター、ジェフ・ハウ…

未来とは新しい過去ー読書感想「「朝ドラ」一人勝ちの法則」(指南役)

あれ、これ指南役さんの本に書いてあったことじゃない?と、最近よく思い出すのが「『朝ドラ』一人勝ちの法則」だ。テレビ番組「逃走中」、映画「バブルへGO!!」などを手掛けたメディアプランナー。そんな指南役さんが、「最近のNHK朝の連続テレビ小説(朝…

加計問題は本当に問題なのかー読書感想「これからの日本、これからの教育」(前川喜平・寺脇研)

「加計学園問題」は何が問題なんだろうか?そもそも、本当に問題なのか?それを考えたくて手に取ったのが、「総理のご意向」文書を告発した元文科省事務次官・前川喜平さんと、同じく元文科官僚で京都造形芸術大教授・寺脇研さんの対談本「これからの日本、…

デジタルネイチャーの未来地図ー読書感想「魔法の世紀」(落合陽一)

「情熱大陸」出演で話題をさらった「現代の魔法使い」落合陽一さんが、テクノロジーやコンピュータ、メディアの現在・過去・未来を書き尽くしてくれた本が「魔法の世紀」である。リアルとバーチャルの境目がコンピュータによって踏み越えられた世界・デジタ…

戦場の匂いがするー読書感想「レッド・プラトーン」(C・ロメシャ)

アフガニスタンの最前線にある米軍の前哨が、タリバン兵に囲まれた。味方は50人、敵は300人ー。実際にあった絶望的戦闘を、生き残った兵士が振り返るノンフィクションが「レッド・プラトーン 14時間の死闘」だ。目をみはるのは、著者のクリントン・ロ…

余白を見つめてー読書感想「リスクと生きる、死者と生きる」(石戸諭)

「被災者」ではなく「ひと」として向き合う。本書「リスクと生きる、死者と生きる」は東日本大震災という大きなテーマを扱ったノンフィクションながら、徹底した「個」の言葉にこだわる。著者は元毎日新聞記者で、現在はネットメディアBuzzFeed Japanの記者…

下を見ろ!おれがいるー「全裸監督 村西とおる伝」(本橋信宏)

「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ!おれがいる」。ノンフィクションライター本橋信宏さんの「全裸監督 村西とおる伝」の帯に書かれた言葉は、圧倒的なパワーワードだ。主人公は異才の男・村西とおる。アダルトビデオや裏本(非合法わいせつ雑誌)に…

そのコンテンツはスナックしてる?ー読書感想「人生の勝算」(前田裕二)

これからのコンテンツビジネスを語る上で欠かせない言葉はきっと、「スナックする」なんだろう。ライブ配信サービス「SHOWROOM」代表の前田裕二さんの「人生の勝算」は、SHOWROOMのローンチからヒットまでの道筋を辿りながら、スナックする、「余白(参加可…

対話こそー読書感想「CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見」(J・ダウドナ)

科学技術が天使になるか、悪魔になるか、決めるものはなんだろう? 「CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見」の著者であるカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ博士は、「対話」だと説く。クリスパーはまさに、夢の技術だ。遺…

左右→上下ー読書感想「ポピュリズムとは何か」(水島治郎)

右派・左派に分かれる従来型の代表制民主主義を、ポピュリズムは「下vs上」に変える。オランダ政治史や比較政治学が専門の水島治郎さんの「ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か」は、世界や日本の「今」を見るための大切な視点を教えてくれた…

人生をプレーするー読書感想「ピッチレベル」(岩政大樹)

これはサッカーを通じて人生を学ぶ本なんだ。元鹿島アントラーズのディフェンダー、岩政大樹さんの「PITCH LEVEL ピッチレベル 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法」を読んで、思わず膝を打った。プロとしての思考を余すことなく言語化してくれてい…

斥力を見よー読書感想「彼女たちの売春」(荻上チキ)

売春の背景には、「引力」だけではなく、「斥力」がある。荻上チキさんの「彼女たちの売春(ワリキリ)」は、冷静なトーンで売春を「社会問題」として描き出す。出会い喫茶や出会い系サイトで、個人として売春を行う女性らへの、親身なインタビューを縦糸に…

命を懸けてから、守ってにー読書感想「過労自殺」(川人博)

「命を懸けて」仕事をするのではなく、「命を守って」働けるように。過労死、過労自殺の問題に長年取り組んでこられた弁護士川人博さんの「過労自殺」には、そんな切実な思いが込められている。本書の第二版が出版されたのは、2014年7月。その後も、電…

草原へ連れていってー読書感想「カウボーイ・サマー」(前田将多)

心を遥か遠く、草原へ連れていってくれる本がある。「カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で」だ。コピーライターの前田将多さんが勤務先の電通を辞めて、憧れのカウボーイになろうと、牧場で働くノンフィクション。カウボーイの実態を伝えるのでは…

論理的狂気ー読書感想「革命のファンファーレ」(西野亮廣)

絵本の全文をネット公開、テレビ収録中に途中退席、著作権放棄ー。数々の「クレイジーと言われる」所業を重ねながらも、著作のメガヒットを連発している芸人・西野亮廣さん。その頭の中を自ら解説してくれた一冊が「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」…

編集会議17年秋冬号「シン・編集力」が本好きに超オススメだった

雑誌「編集会議」の2017年秋冬号「特集・シン編集力」(10月16日発行)が、読書ファン・本好き必見の超面白い内容だったので、紹介したいと思います。前半に「2017年ヒット本を生んだ『編集力』」などと題して、堀江貴文さん「多動力」や、西野…